病める無限の芸術の世界

芸術に言い訳する方法ばかり考えています。

個人的音楽哲学・音楽美学で翻訳して欲しい著作

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最近翻訳について色々考えている。
色んな翻訳を見ると色んな間違いがある。
超越論的が超越的になってたり、直感的(ないし情感的、美的)が美学的になっていたりと、偉い文庫の翻訳でも色々ある。

けど、翻訳があるからその研究が捗るよなみたいなのは確実にあって、雑なものであっても翻訳書で面白い著作が読めるかどうかで、その著作の分野に参入したがる学部生が現れるかどうかが決まっているように思う(最初から分野を決めている学部生とかは、いきなり原書とか読んじゃうもん)。

*追記(160212)
森さんが似たようなことを言っていました。
分析美学ってどういう学問なんですか――日本の若手美学者からの現状報告 / 森功次 / 美学者 | SYNODOS -シノドス-

例えば音楽美学。音楽美学は元々流行ってないからいいんだけど、それでも、Twitterとかシラバスで「音楽美学」で検索すると、結構な惨状なのが分かる。
分析的音楽哲学が授業で扱われていないのは当たり前でいいんだけど、例えばハンスリックとかデカルトとかの音楽論が扱われてない。しかも概説で。
何が行われているかというと、例えば演奏研究、例えば様式研究、簡単に言って音楽理論の分野で行われているやつ。もしくは音楽美学の中でも作品、作家論などの芸術学的要素の強いものばっかり。
これ、学部生に学ぶ機会を全然与えないですよね。
たぶん、音楽やってる人って(日本の指導の方法とかもあって)「表現ってなんやねんアホクサ」とか「演奏の理想ってなんよ」とか「ケージって音楽なん?」とか1回は考えたことがあるはずで、そういう人が上に上げた音楽美学の授業履修しても面白く無いと思うんですよ。

この原因になっているのが、教科書のなさだと思う。
たぶん今のところ哲学的な音楽美学の概説をしようとして、教科書指定できそうなものがない。
国安先生の『音楽美学入門』は古いし絶版、今道先生の『精神と音楽の交響』も絶版。

音楽美学入門

音楽美学入門

 

 

精神と音楽の交響

精神と音楽の交響

 

本もないし、大学の先生が音楽美学について教えてくれなければ、まともに学ぶのは結構難しい。というかまず興味を持つのが無理。
ブルレの翻訳もないしハンスリックも超古い訳しかない。

ということで音楽美学でこれ翻訳して欲しいな〜という著作をまとめました。
個人的なので音楽哲学に限ってます。というかさっきあげた「ケージって音楽?」みたいなやつってブルレとかは教えてくれないしね。

まず、
Graycyk, T. 2013. On Music. Routledge. 

On Music (Thinking in Action)

On Music (Thinking in Action)

 

このThinking in Actionシリーズは、専門と一般の中間みたいな著作で、たぶん英米圏でも学部生向けくらいの本だと思う。

英文も非常に易しいし、構成もわりといい。
そして、このシリーズからノエル・キャロルの On Criticism が今年勁草書房から出るかもしれないらしい(森さん訳)。
これを機にこっちの本も訳してくれないかなという気持ちがある。

音楽美学の人でなくても、分析美学の人であったり、分析哲学の音楽詳しい人であれば誰でも訳せると思う。

次、
Kivy, P. 2002. Introduction to a Philosophy of Music. OUP.

Introduction to a Philosophy of Music

Introduction to a Philosophy of Music

 

分析的な音楽美学の創始者とも言えるキヴィ先生による入門書。
これは少し分厚いし、中身もしっかりしてるけど、入門書としては今だに鉄板。
キヴィ先生日本にくるらしいので、それまでに翻訳は無理にしても、そこで翻訳権とる人とか現れるといいんちゃうかなと思っています*1
渡辺先生とかやってくれないだろうか。

あと個人的なやつ。
Levinson, J. 2011(1990). Music, Art, and Metaphysics. OUP.

Music, Art, and Metaphysics: Essays in Philosophical Aesthetics

Music, Art, and Metaphysics: Essays in Philosophical Aesthetics

 

これいい本なんですよ。
芸術(音楽)の定義から、音楽について、存在論、評価、真正性と、音楽にまつわるトピック盛りだくさんで、しかも専門的。
結構古いけど今読んでも面白い。
というかキヴィ先生とレヴィンソン先生の音楽哲学を下敷きに近年の音楽哲学は発展してきたので、これが翻訳されるといいんだけどなー。

 

ということです。
今みたいな授業で音楽美学、音楽哲学が学べないのって、ぶっちゃけ特殊音楽美学を音楽美学一般だと騙って授業しているお偉い先生が消えない限り変わんないと思う。
だからこういうのが訳されて、20年、30年したあとには、哲学的音楽美学が大学で、概説で、特講で、演習で、学べるようになるといいなぁと思います。

というかこのせいでそういう授業なさすぎて聴講で音楽美学を学ぶとかができないんだよ!!!

*1: