病める無限の芸術の世界

芸術に言い訳する方法ばかり考えています。

ジョセフ・マゴーリス「芸術作品の存在論的独自性」

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Margolis, Joseph. 1977. "The Ontological Peculiarity of Works of Art." The Journal of Aesthetics and Art Criticism, 36(1): 45-50.

初期分析美学の哲学者、マゴーリス*1の論文。

タイプとトークンに関する議論を芸術作品に応用したもの。 

 

マゴーリスは、初期分析美学者には珍しくそれなりに紹介されている。
といっても、マゴーリスを紹介していてすぐ手に入るものはほぼ以下の二択しかない。

 

 

 

講座 美学 (3)

講座 美学 (3)

 

どちらもマゴーリスの紹介が入っている。
前者は、1959年の有名な論文(Margolis, J. 1959. “The Identity of a Work of Art.” Mind, 68: 34-50.)の翻訳。
後者は、今回読んだ論文のまとめ。適宜参考にしたけど、訳語はほとんど参考にならなかった
追記:後者はまったく参考にしない方がよいと思います。グッドマンなんて知りません。

この論文でマゴーリスが守りたいことは2つ。

1つ目は、芸術作品は芸術家が創造(create)しているということ。

2つ目は、普遍者(universal)は創造されえないので、芸術家は個物(particular)を創造しているということ。

以上が大体議論されていることで、それについて書かれています。全訳を作ったんですけど頭の中でうまく整理されていないので、ざっくり行きます。

 

議論は、ジャックグリックマンの議論から始まる。

個物としてのタイプ / トーク

スープと芸術を類比して語るグリックマンは、「タイプは創造され、個物は作られる(made)」と語る。しかし、タイプを一種の普遍者であったり種(kind)だと捉えると、それらは創造されえず、また破壊されえないので、上の命題は誤っているということになる。

マゴーリスは、すべての芸術作品が必ずトークンを作ったときに創造されるということに同意している。そのため、個物としてのトークンを作ったときに、タイプも創造されるとかんがえる。

だが、そうすると上に述べたように普遍者や種の規定に違反してしまうので、マゴーリスはタイプを個物として考える。それは、個物トークン(token-particular)を作ったときに、創造される個物タイプ(type-particular)である。
さらに、すべての芸術作品はトークンを持たずに存在せず、タイプはトークンなしに存在しないため、両者は切り離せず、「トークン」という言葉は必ず「ある-タイプ-の-トークン」を意味する。

必要条件としての人工物

グリックマンは、これまで芸術作品である必要条件の1つとして考えられてきた「人工性の条件(the condition of artifacutuality)」は不必要であるとする。なぜなら、砂浜にある流木を芸術作品だとしたときに、それを誰も作っていないため、創造もされていないと考えるからである*2

しかし、マゴーリスは、そのような誰も作らない作品(レディメイドとか)も創造であると思っている。

上のような場合に芸術家が創造しているものは、普遍者でない個物タイプであるとする。それがなぜ創造で、ただの木でなく芸術作品なのかは具体化の問題と絡めて述べられる。

具体化(embodiment)

マゴーリスは、芸術作品の存在論的独自性として、個別のタイプとして創造される点以外に、ある個物に他の個物が具体化されているという点を指摘する。

つまり、芸術作品(特に上であげた作られない芸術作品)は物理的・知覚的には、ただの流木だったり、ボトルラックだったりする。しかし、「芸術作品」としての物体は、物理的・知覚的な物体がもたないような、文化創発的(culturally emergent)性質を多く持っている。それはなぜかというと、物理的なPという個別の物体が、文化創発的なWという個物を具体化しているからだとマゴーリスは考える。

それには以下のような条件がある。

(i)二つの個物は同一でない
(ii)具体化された個物の存在は、具体化している個物の存在を前提としている
(iii)具体化された個物は、具体化している個物の性質をいくらか所有している
(iv)具体化された個物は、具体化する個物が所有していない性質をいくらか所有している
(v)具体化された個物は、具体化している個物が所有不可能な性質を所有している
(vi)具体化された個物の個体化は、具体化する個物の個体化(individuation)を前提とする。

以上のような条件が守られるとき、具体化が行われている。

最後にマゴーリスは、
芸術作品とは、文化創発的存在者であり、物理的な物体に具体化されて存在する「ある-タイプ-の-トークン」である。
と締めくくっている。

 

所感

たった5頁*3の論文なのに、色々な問題が詰まっていて難しかった。

特にタイプ / トークン、普遍者 / 個物、種 / 事例、集合 / 要素など、対概念がいくつもあげられて、それらの違いが重要になっている気はするのだけど、うまく読めていない。
マゴーリスは難しいというのがわかった。

次回の鬼嫁会は!*4

8月23日10時から行います。
文献は、Walton, K. 1970. “Categories of Art.” The Philosophical Review, 79(3): 334-367. です。

素晴らしい翻訳⇒K. Walton「芸術のカテゴリー」|morinorihide|note

その解説⇒ウォルトンのCategories of Artを全訳しました。補足と解説。 - 昆虫亀

宗教哲学勉強会 ましまろから野瀬さんがお越しになってかつレジュメを切ってくれます!
新参加者の方をいつも募集しております。
詳細は以下のサイトで。

分析美学鬼嫁会

 

*1:マーゴリスやマルゴリスなどの紹介もあるけれど、どう聞いてもマルゴーリスかマゴーリス。以下で音が聞けます。

Cindy Margolis Interview - YouTube 

*2:これはウァイツ(Weitz)なども同様に考えていて、マゴーリスは人工物に関してしっかり規定したのが偉いと思った。

*3:底本はLamarque & Olsenのアンソロジー

 

Aesthetics and the Philosophy of Art: The Analytic Tradition: An Anthology (Blackwell Philosophy Anthologies)

Aesthetics and the Philosophy of Art: The Analytic Tradition: An Anthology (Blackwell Philosophy Anthologies)

 

 

*4:これないとリンクにできないので毎回つきます